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「経営企画の立ち上げ」は型化できるのかを考えてみた話

株式会社ベーシック執行役員 CAOの角田(@takeshisumida_)です。
私は現在はコーポレート部門の管掌役員として、経営企画、人事、広報、経理、財務、法務、総務、内部監査など、バックオフィス周りの機能全般に幅広く関わっています。

この中の経営企画については、まだ会社に機能として存在していなかったゼロの状態からの立ち上げを行い、その経緯を記した以下noteでは、少しニッチなテーマながら、ありがたいことに非常に多くの反響をいただきました。

経営企画というものは、しばしば社内の中では板挟みになったり、孤軍奮闘しがちな職種でもあります。そのため、会社を超えた情報交換や相談が気軽にできる場の創出を目指して、会社の業務とは別に「経営企画コミュニティ(#経企コミュ)」の運営にも携わっています。
そしてこの活動を通じて、上記のnoteでは細かくは触れていなかった経営企画立ち上げの詳細について、コミュニティの中で質問を受けたり、登壇でお話したりすることもこれまで多くありました。

そこで今回は、前回のnoteを補足する形で、「経営企画の立ち上げ方」について、方法論的なことを改めてまとめてみようと思っています。
前半は立ち上げの「型」について、後半は立ち上げの際に必要な「人」について説明している構成となっています。

・現在まさに経営企画の立ち上げにアサインされ試行錯誤している方
・これから経営企画の立ち上げを検討している経営者や管理部門責任者の方
・そもそも経営企画って何してるのかもっと理解したいという方

などに特に読んでいただけると嬉しいです。(※あくまで経営企画機能が存在していないベンチャーやスタートアップを想定して書いていますので、上場企業や大企業の方にとっては当たり前のことも書いている旨ご了承ください)

経営企画立ち上げのフレームワークとは

経営企画の役割については、会社によって定義や範囲がまちまちであるものの、会社をジャングルだと見立て、経営企画は「ジャングルガイド」のような立場であると考えれば、やるべきことが比較的明確になるという話を前回書きました。

一つ一つの業務について何をすべきかを書き出していくと、会社による範囲の違い論にぶち当たり、結局汎用性が無かったり、再現性のある取り組みにならなかったりする可能性が高いと思っています。

そこで今回も「ジャングルガイド」を例に、経営企画の立ち上げというものを、以下フレームワーク?に沿って型化できるのかを考えてみました。

1. どちらが出口かを指し示す(事業計画・中期計画の策定)
2. 道の誤りを指摘、指導する(予実管理)
3. 効率的に歩けるように草木を伐採する(業務改善・BPR)
4. 伐採に必要な道具の調達を行う(システム導入)
5. 隊列を整える(組織変更、人員配置)
6. 食べ物や水分の補給を適切に行う(資金調達)

1. どちらが出口かを指し示す(事業計画・中期計画の策定)

やはりなんと言っても一番肝となるのはこの部分です。ジャングルで例えると、「地図はあるか、それに基づいた出口までのルートが分かっているか」ということです。この計画策定については、前述経営企画コミュニティにおいても複数回ミートアップのテーマとなっていることからも、世の経営企画担当の関心の高さが伺えます。

経営企画機能ができる前の会社においては、社長や経理が兼務で計画策定部分を担っていることが多く、計画の策定がタイムリーに行えていなかったり、行なっていたとしてもその粒度や精度が粗かったりするため、今自分達がどこにいるかはなんとなく分かるけど(=足元の実績は分かるけど)、次どっちに行けばいいのかはあまり分からない、ということが起こりがちです。

まずは、最低1年に一回、次年度が始まる前に、最新の地図(=計画)を作成するプロセスを必ず実装しましょう。

2. 道の誤りを指摘、指導する(予実管理)

前述の地図(=計画)は当然作りっぱなしではそれはそれで意味がありません。その地図に沿って会社が正しく出口に向かっているか、地図と現在地を随時照らし合わせて確認する必要があります。そこで必要なのが「予実管理プロセス」です。毎月実績が出た時に、上述予算との比較および差分分析を行う必要があります。

そして、実績比較と合わせて実装したいのが「最新見込み作成プロセス」です。実績の確認は、あくまで自分たちが当初計画していたルートと比較して実際どこまで進んでいるかの現在地の確認です。仮にこれが計画と大きく外れている場合、ただその事実を認識するだけではなく、それに応じたルートの再設定が時には必要です。

このルートの再設定が最新見込み作成のプロセスであり、売上は厳しいけど費用の削減により計画の利益を確保する、新規獲得は厳しいけど解約の抑制により引き続き計画の売上水準を目指す等、ゴール自体は見直さないもののその到達の仕方を定期的に確認することにより、ゴール達成に必要なアクションを確実に洗い出すための行為です。

その上で重要なのが、そのプロセスに「会議体」も組み込んで設計しておくことです。ただ単に数値作成のスケジュールを引くだけではなく、実績や見込みについて、状況の報告やアクションも含めた議論を、どのタイミングで、どのメンバーで、どのような場で行うのかをあらかじめ設計し、それらの場に向けて月次の一連の必要な情報が集約されるようにしておくべきだと考えています。(以下例のように、まずは会議体も含めた月次スケジュールを作成しておくのがいいでしょう)

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3. 効率的に歩けるように草木を伐採する(業務改善・BPR)

ゴールまでのルートが定まったら、次に考える必要があるのは、「いかにそのゴールまで最短・最速で到達できるか」です。

繰り返しになりますが、会社をジャングルに見立ててみた場合、例えばジャングルが数メートル四方のごく小さなものであったり、そもそも木がほとんど生えておらず見通しがよければ、誰にも頼らず自力で出口までたどり着けるでしょう。会社が大きくなるということは、そのジャングルの敷地面積が拡大していったり(事業・売上の拡大)、様々な木が生い茂っていく(取引・費用の複雑化)ようなものです。ゴールまでの道のりを妨げるこれらの障害をそのままにして歩くのは当然非効率であるということは容易に想像できるでしょう。

そこで必要になってくるのが業務効率化やBPRと呼ばれる作業です。しかし、そんなことは頭では分かりながらも、パーティーのメンバーは歩くことそのものに必死で(=日々の業務に忙殺されて)、そこまで気が回らないことが多いのではないでしょうか。ゆえに、ジャングルガイドである経営企画が、率先して先回りして草木の伐採(=効率化)や抜本的な道の整備(=BPR)を行うべきなのです。

なお、業務効率化手法については、それはそれでnoteを書けるくらいのネタになりますが、ここでは特に経営企画立ち上げのようなフェーズにおいて意識すべき大事なことに一つだけ言及すると、「そもそもやめるべき業務は無いか」をよく考えるべきであるということです。それまでの事業運営で脈々と積み上がってきた会議やプロセス、作業について、本当に必要かどうかを見極めないまま、それらの効率化手法を検討するのは最も非効率なことだからです。

4. 伐採に必要な道具の調達を行う(システム導入)

その上で、上述の草木の伐採を効率的に行うための道具の調達(=システム導入)も、経営企画の大事な役割だと考えています。よくあるシステム導入ありきになっている的な話も、ジャングルガイドになぞらえると分かりやすいかもしれません。伐採はあくまでそのジャングルにどれくらい草木が茂っているのか、またどういう種類の草木が生えているのかという状態に応じて行われるべきものであり、とにかく伐採なのでチェーンソーを買えばいい、というものではありません。もしかしたらナイフ程度でいけるかもしれませんし、高枝切りバサミのように特殊な状況にふさわしい道具が必要かもしれないということです。

前述計画策定や予実管理を通じて、しっかりと既存の会社の状態であり業務の状態を見定めた上で、それにふさわしい道具(=システム)を導入していきましょう。
ご参考までに、現在ベーシックで使用しているコーポレート周りのシステム一覧を置いておきます。(これはこれで別の機会に説明したいとは思っています)

バックオフィスツールマップ

5. 隊列を整える(組織変更、人員配置)

長い間ジャングルを歩いていると、徐々にその隊列は乱れてくるものです。もしかしたらパーティーの先頭と最後尾が大きく離れているかもしれません。ジャングルガイドはその状態もしっかりと見定め、隊列の順序や形態を変更することも時には出てくるでしょう。

会社の組織においても同じです。進行速度が当初の計画から遅れている、道の間違いが多いと感じれば、ここまで前述しているアクションをより効率的に遂行するためにも、組織変更や人員配置の変更をジャングルガイドである経営企画が率先して提言するべきだと考えています。

一つ具体的な例としては、経営企画と事業部との間の窓口を一本化するというものがあります。これまでお話したように、経営企画にとっては現状を把握することは非常に重要です。ただし、特に事業部の現状を把握するその確認先が複数あることが往々にしてあります。例えば、売上の詳細は営業に聞いて、費用の詳細はCSに聞いて、売上の中でもこのKPIはマーケに聞いて、というようなことです。これでは現状の把握自体が非効率です。たまに全部の数値は事業部長が把握しているから、というパターンもありますが、これはこれで一般的にはスピードが出ないので(=そんなにタイムリーに対応できる事業部長はなかなかいないのでw)、できれば事業部の数値周りについては、一本化してまとめて把握する人を別途アサインするのが良いでしょう。(会社によっては事業企画や事業管理と呼ばれる機能です)

6. 食べ物や水分の補給を適切に行う(資金調達)

最後は食べ物や水分の補給という観点です。こちらについてはそもそも無ければジャングルで死ぬ(=会社が潰れる)ので、会社にとって重要な機能であることは容易に想像できるかと思います。
ただしこの点については、重要だからこそ、社長や創業初期から迎え入れてる財務のメンバーが元から見ていることも多く、経営企画を作る時まで誰も見ている人がいない、という状況は多くないかもしれません。

一方で、資金繰りの参照情報となるべき前述の計画や見込みが、プロセスの問題でまだ不十分であった場合、それまで作っていた資金繰りがあまり正確でなかったり、足元のキャッシュ自体は確かに回るものの、株主構成なども含め、中期的な資本政策として戦略的に行えていないという状況は生じ得るかと思います。

私も含め大企業の経営企画出身者は、計画策定=PL(損益計算書)作成とその範囲を考えがちですが、これから経営企画を立ち上げるというスタートアップやベンチャーの規模の会社においては、PLと合わせ、当然キャッシュフローと資本政策はセットで考えられるべきものであり、仮に経営企画以外の既存部署がその機能をカバーしていない、もしくはカバーはしているけど不十分ということであれば、ジャングルガイドである経営企画がしっかりと導くべきところでしょう。

経営企画の立ち上げにふさわしい人材とは

さて、ここまでが経営企画を立ち上げる際のフレームワーク的なもののご紹介でしたが、次によく聞かれる質問として、「どういうメンバーで経営企画を立ち上げるべきか」というものがあります。

これも結局その会社のその時点の状態であり、その結果経営企画が担っていく範囲によるので一概には言えないのですが、実際にメンバーと立ち上げた経験を踏まえ、それなりに共通する要素を以下に記してみたいと思います。

・巻き取り力
・プロジェクトマネジメント力
・現場理解力
・整理整頓力
・コミュニケーション能力

・巻き取り力
経営企画の立ち上げ時は特に、既存組織では足りていないこと、会社的に重要なのにいつのまにか運用が形骸化した仕組み等、ジャングル脱出のために必要な課題が散在しています。
そのため最も根本として必要なのは、会社のためになることであれば、業務を選り好みせず、まさにあらゆることをするマインドであり、忖度せず組織間に落ちているボールを積極的に拾っていく「巻き取り力」です。
自分の業務範囲を限定する人や、とにかく自分の描くキャリアに必要なことしか経験したくないタイプの人は向いてないと言えるでしょう。

・プロジェクトマネジメント力
前述で巻き取っていく業務は立ち上げ時であればあるほど多岐に渡るため、それら複数のプロジェクトを確実にマネージし遂行してく力は、巻き取り力そのものと合わせてとても重要です。上述計画策定や予実管理そのものが、大前提としてそもそも一つの大きなプロジェクトであるということはもちろんです。
それに加え、これは経営企画に限りませんが、新しく部署が立ち上がった時に最も意識しなければいけないのは会社や周りのメンバーから「信用を得ること」であると考えています。そしてその信用を得るためには、とにかく周りにいち早くバリューを見せることが重要なのです。このためにも、複数の業務を確実に遂行する「プロマネ力」は必須の力と言えるでしょう。

・現場理解力
経営企画と言えば数値管理と思われがちです。もちろんベースとして数値に強いに越したことはないのですが、ジャングルガイドである以上、ただ地図が分かる(=計画が作れる)というだけでは片手落ちです。前述のように、現在地を随時把握しながら、その上で、草木の伐採や、道具の購入、隊列の変更、食料や水分の補給などを随時行っていかなければいけないのです。
そのために必要なのは現場である事業に対する理解です。もっと言えば、経営企画としてのバリューの大きさは、「事業のオペレーションレベルまで踏み込めるかどうか」で大きく変わると個人的には考えています。ただ売上を上げろ、費用を下げろ、というのはある程度PLが読めれば誰でも言えることです。その数値改善を実現し得る現場のオペレーション改善や改革まで含めて事業側と共に議論することができる「現場感」がより重要なのです。

・整理整頓力
とにかく経営企画の立ち上げ期は、会社のあらゆることが散らかっており、整理されていないことが多いです。上述プロマネ力により、その散らかっている複数の物事を並行して推し進める力はもちろん、それらを属人化させることなく、合わせてマニュアル整備を行うなど、誰が担っても運用に乗るよう、しっかりと整えていく「整理整頓力」を持っていることが合わせて必要です。もう少し平たい言葉で言い換えると、綺麗好きであるかどうかとも言えるでしょう。
各論になりますが、ここら辺の性格は、計画や予実管理のフォーマットにもよく現れます。いくら担当自身は理解していても、複数の人が見ることが意識されておらず、その担当しか分からないロジックやルールで塗り固められたフォーマットしか作れない人が経営企画業務を担うと、結局どこかでいつか破綻するものです。

・コミュニケーション能力
結局、というところですが、あくまで単独ではなくパーティーとしてジャングルを突き進んで行く以上、他のメンバーと円滑にコミュニケーションが取れることは必須の能力だと考えています。これは何か依頼や指示を出した場合にしっかりと聞く耳を持ってくれるという意味でもそうですし、前述したような各種施策を実行する上で、現場の状況を正しく吸い上げるという意味でもそうです。
いくら数字に強く分析や戦略策定は完璧という人でも、とにかく何を言うにも頭ごなしで、現場からの反発が強く、コミュニケーションがうまく取れないという人は、経営企画の立ち上げには向いていないでしょう。

経営企画を立ち上げる上での心掛け

繰り返しになりますが、経営企画がジャングルガイドだとすれば、メンバーがジャングルで迷って死なないよう、出口に向けてあらゆる手段を講じる必要があります。そもそも落ちているボールは全て拾っていく必要がありますし、それは元々誰の役割だからということにこだわらず、組織の壁を乗り越えていく必要があります。
時に経営企画は何でも屋だと揶揄されることもありますが、メンバーが死なないために必要なことを何でもするのはある意味当たり前なのです。

一方で、作った仕組みが運用に乗り、現場でも行えるようになれば、どんどん経営企画の手から離していく柔軟さも合わせて必要です。「それは経営企画の仕事だから」というように、一度業務を担ったからと言って、その業務範囲に固執し、経営企画が組織のボトルネックとなったりセクショナリズムを生むような行動は控えたいものです。
究極的には、ジャングルガイドがいらず、メンバーが自走してゴールまで到達できるのであればそれに越したことはありません。あくまでジャングルの脱出が目的であり、経営企画がその時その時に担う役割はその手段なのです。

経営企画を立ち上げる、というシチュエーション自体はそんなに多くあることではないかと思いますが、ご紹介した内容が、近しい状況の方に少しでも参考になっていれば幸いです。

今回の経営企画ネタを含め、コーポレート組織にまつわることをこれからもnoteTwitterで発信していきたいと思いますので、それぞれフォローしてもらえるととても嬉しいです!

https://twitter.com/takeshisumida_

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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