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PLG型SaaSの生命線を握る、データ分析チームの挑戦

皆様こんにちは。株式会社ベーシックの深川です。
ベーシックには「PLG事業部」という、PLG(Product-Led Growth)型のSaaSを開発・提供する部署があり、私はこのPLG事業部の「データ構築推進グループ」にて現在活動しています。

データ構築推進グループは2022年4月に発足し、現在半年弱ほどが経過しています。グループが発足してから、文字通り日々データの推進を担当していく中で、PLGにおけるデータ分析の面白さ、そして同時に難しさを実感しています。

このnoteでは、そんな私達のグループの現在の取り組みについてお話できればと思います。特に以下に該当する方にお読みいただき、ほんの少しでもPLGにおけるデータ組織やデータ活用に興味を持っていただければ嬉しいです!

・事業目線で目的意識を持ちながら、事業ドメインに深く関わったデータ活用をしたい方
・事業会社のデータ人材として、ビジネス職と掛け合わせながら 〇〇 × データでキャリアを築いていきたい方
・国内でまだ前例が少ない、PLG領域におけるデータ活用にチャレンジしたい方

PLGにおけるデータの重要性

現在PLG事業部で開発・提供している主なツールは、フォーム作成管理サービスの「formrun」というサービスです。

formrunの事業の特徴は、いわゆるSLG(Sales-Led Growth)と呼ばれるセールスによってプロダクトを売るモデルではなく、”シンプルなUXやセールスを介さないオンボーディング” ”使用感を試せる無料プランの提供” など、プロダクトでプロダクトを売る、冒頭でも既に触れた「PLG(Product - Led Growth)」型のSaaSである点です。
日本のサービスではまだまだ限られていますが、PLG型SaaSとして有名な例では、海外のものではSlackやZoom、Dropboxなどが挙げられます。

参考:【解説】SaaSの新戦略。Product-Led Growthの全貌

同じくPLGであるformrunにおいても、あくまでプロダクトを中核としており、セールスを介在させていません。そのため、直接的にお客様との接点が無いため、結果的に意思決定の拠り所として、データの比重が高くなります。

ユーザーの属性、プロダクト内外のアクション、プロダクトの利用状況など、データを元にした仮説設計や示唆を抽出、設定した重要指標をモニタリングし、施策の意思決定が適切だったのかを測定して仮説を検証していきます。
PLGにおいてはデータを元にした仮説構築と検証が必須であり、異なる言い方をすれば、データが事業部の生命線です。それ故に、我々データ構築推進グループが果たすべき役割が非常に大きくなっています。

データ構築推進グループの役割

PLG事業部は、現在は大きく「プロダクト部」と「User Experience部」に分かれています。ざっくり言うと、前者がPdMを中心にプロダクト・開発に関わる部分に責任を持ち、後者はPMMを中心に、販促や売上等、ビジネス側の取りまとめを行う、という役割となります。

この体制に基づき、プロダクト部は継続的にプロダクトを進化させ続け、価値を高める。User Experience部においては、グロースマーケティングとカスタマーサクセスがプロダクトとその体験をお客様に提供する。そして、データ構築推進では、各グループが立てた仮説をデータで検証することに加え、事業企画とも連携しながら事業全体の戦略や意思決定を行っていく。このような分担を取っています。

formrunはPLG型のSaaSであるため、TAM(最大の市場規模)が極めて大きいという特徴があります。ありがたいことにユーザー数は2022年7月時点で20万を突破し、毎日数百以上、月では何千という単位でユーザーが新規登録し続けています。それに伴い、ユーザーに紐付く属性データや行動ログのデータも含めると、データ量は爆発的に増加し続けています。

データ量が多い分、適切・的確にデータを収集し、整備して、意味のあるものにしていくという活動は、ベースとして当然必須になります。formrunはホリゾンタルSaaSであり、誰でも簡単に、広く便利に使えるため、利用ユーザーの業種・職種・用途が多岐に渡り、属性ごとに最適な体験も異なります。

例えば、

  • 継続率や単価、LTVが高い属性はどこか

  • 属性ごとの獲得状況や獲得効率はどうか

  • 属性ごとにどのような機能が利用され、どんな体験パターンが最適なのか

など、データを主軸に解き明かしていくべき範囲が広く存在します。そのため、プロダクト開発、UI/UX改善、マーケティング施策、カスタマー施策などなど、あらゆる戦略・戦術においてデータがもたらすインパクトが大きく、その分データアナリストにとってはとても腕の振るい甲斐がある環境です。

多岐に渡るformrunの利用用途

具体的にどんなことをしているのか?

現在は、 データ活用を推進し、組織のデータドリブン化に本腰を入れて取り組んでいるところですが、大まかに言うと、「意思決定の質と量の最大化」、「データ活用基盤の整備」という2レーンに分けて業務を進めています。
事業全体の戦略設計に対応させながら、以下のように2レーンが相互に関連し合うもののため、レーンごとのゴールとロードマップを作り、バランスを取りながら進めています。

1)意思決定の質と量の最大化

データ構築推進グループとして、事業部へのリターンが最も求められる部分は、意思決定の質と量の最大化、より具体的に言うと「データを用いて事業の仮説検証を高速化・高度化し、意思決定を推進すること」です。

そのために、

  • データの可視化

  • データによる課題分析・仮説検証

  • 将来のデータ予測

に取り組んでいます。ここでは具体的な取り組み事例を紹介できればと思います。

データの可視化

まずは当然のことながら、そもそもとしてデータを元に”現状把握”と”仮説構築”ができる環境を作る必要があります。事業部や各グループのメンバーがいつでも重要指標を確認でき、そこから仮説を立てられるようデータ環境を整備しました。

現在Tableauにてダッシュボードを整備しており、それまでさまざまなスプレッドシートなどに点在していた重要指標がダッシュボードに一本化されることで、全てのメンバーがいつでもスムーズにモニタリングできる仕組みになっています。

データによる課題分析・仮説検証

”課題分析や仮説検証” の面では、「ペルソナ」「カスタマージャーニー」「カスタマーファネル」等のユーザーデータを整備し、新規有料化・アップセルのトリガーとなる要素の分析を進めています。プロダクト内のどんな行動が有料化やアップセルに影響しているのか?未然に特定していくという内容です。

加えて、来年以降はPLGで新規ローンチ予定のプロダクトがあるため、formrunとのクロスセルの科学も少しずつ準備をしています。(以下それぞれの取り組みの詳細)

・有料化・ファネル遷移・アップセルのトリガーとなる要素の科学

・ユーザーのLTV分析によるターゲット選定、解約予測に貢献

・PLGで新規ローンチするサービスとformrunのクロスセルの科学

将来のデータ予測

データの可視化・データの分析と合わせて、将来のデータ予測を行っています。主には売上の管理として、売上の着地見込みや、将来の売上予測をしています。早めに未達リスクを検知し、素早く改善アクションを取っていくには必須の活動です。

内容としては、解約してしまうユーザーや、新規で獲得できるユーザーの予測を中心に行っています。例えば解約予測であれば、どんなユーザーが解約率が高い傾向にあり、逆に継続率が高いユーザーの特徴は何か?ということをデータから明らかにし、ユーザー属性ごとの解約率と、属性ごとの獲得ユーザー数を掛け合わせることで、将来の解約見込みを立てることができます。
事業が成長し、売上規模が大きくなっていくにつれて、継続的に予測精度を高めていくことが重要になっています。

 事業を推進する上での意思決定のために、データが鍵になるものは数多くあります。データ構築推進グループがどれだけ先回りしてデータを用意し、仮説を検証し、事業計画に組み込めるかによって、その後の事業成長角度が変わってくると考えています。

2)データ活用基盤・環境の整備

多くのデータ量が存在しているため、ただ単にデータを蓄積し続けるだけでは、データ活用の前段階にさまざまな課題が生じてしまいます。

  • データ自体が間違っている。(更新されていない、誤った加工をしている)

  • 各部署でさまざまなデータソースからExcelファイルやスプレッドシートが作られ、定義が揃わない。

  • 定義の違いで見る場所ごとに数値が違う。

  • データが適切に保存されず、削除されてしまう。 など

そのため、データ構築推進グループが分析していくテーマをスムーズに推進できるように、必要になる基盤を整備しており、現状はTableauとBigQueryを活用する環境ができています。

PLG事業部内のデータだけでなく、ベーシックの別事業であるメディア「ferret」の会員データも、ferretからformrunへの送客の基盤として活用するためデータを連携しています。ferretは会員数46万、月間550万以上のPVがある日本最大級のWebマーケティングメディアであり、これだけでもデータ量が多く、データ活用の素地が広がっています。

現在は短期的な分析テーマに必要な基盤は整備できており、基盤を使って足元のデータ分析や可視化はスムーズに行える状態です。並行して将来のための準備として、中長期的な分析テーマに必要な基盤の構築も進めています。

PLG事業部のデータの特徴としては、DWH(データウェアハウス)がシンプルで軽く、新しいデータを取得しやすいというものが挙げられます。
システムが重い企業の場合、新たなログデータを取得したり、既存の整備されたデータを加工することが難しい、という場合もあるかもしれません。企業によっては、サービス上から新たなデータを取得しようとした際の社内稟議・開発などのプロセスに、数ヶ月かかるケースもあるようです。

現在のPLG事業部ではDWHがシンプルで軽いからこそ、データ基盤の柔軟性が高く、既存で整備されたデータ以外にも、サービス上の行動ログなど新規データを取得したり、新たに加工・抽出を行うなどを、たった数日で行えるため、柔軟に新しい分析を試していくことが可能です。

そのため、自分で分析手法を考え、新たな必要データを定義し、どんどんデータ活用の範囲を広げていきたい!という方には最適な環境かと思います。

どんなチーム体制なのか?

現在、社内と社外パートナーを合わせて、7名の体制で進めています。役割としては以下のように分担しています。

  • データアナリスト … データ可視化や分析の推進

  • データサイエンティスト … 自然言語処理・機械学習等の実装

  • データエンジニア … データ基盤の構築や保守運用

社外パートナーとしては、株式会社R SQUAREDさんというデータ活用の専門企業と協業しています。起点となるデータで解く課題の設定や、出口となるデータ分析後の施策接続といった部分は社内で推進しつつ、分析設計や可視化などの工程でサポートをしてもらう形です。

データ分析設計のみでなく、データサイエンス領域も専門としているため、分析の上流設計や機械学習等、専門性が高くテクニカルな領域の実装スキル面を含めて支援してもらっています。特にリクルートやサントリーといった、大規模データを持つBtoC企業での成果や実績があり、低単価・シンプルなプロダクト・極めて大きなTAMというPLG戦略を取っているformrunとは相性が良く、応用できる分析ソリューションを展開しています。

一方で、扱っているデータの規模に比べると、まだまだ十分な体制とは言えず、限られたリソースの中で、なんとかやりくりしている状況です。だからこそチャレンジできる範囲はまだまだ広く、専門性の高いパートナー企業からも、どんどん学んでいける環境です。

また、少人数でリソースが限られているからこそ、あれもこれも見るのではなく、どんな問いをデータで解決すべきか?という点には注意を払っています。データチームは、役員・部長との毎週の戦略会議にも参加しており、極めて事業の意思決定に近い距離で働きながら、データで解決すべき事や、データ活用のポイントの目線を揃えています。

中期的にはこの体制をどんどん内製化していきたいとも考えており、そのため力強いデータアナリストは現在も積極的に採用中です。

今こそ、PLGのデータ活用を極められる絶妙なフェーズ

繰り返しになりますが、PLG事業部は、SaaSの中でもユーザー数が圧倒的に多い分、データ活用の余地が極めて大きい環境です。その分析を進めるにあたり、これまでのハードルであったデータ基盤自体はほぼ整備されつつあります。この基盤が整ったことで、必要なデータの可視化やインサイト抽出をここからさらに加速させていく段階です。

また、現在グロースさせているformrunに加えて、新たにローンチするPLG型のプロダクトも控えており、新規と既存のどの方面にもデータ活用は求められています。

  • 既存サービス(formrun)の 1 → 10 のグロースフェーズ

  • 新規サービス(新規PLGプロダクト)の 0 → 1 の立ち上げフェーズ

  • 双方の共通顧客基盤やクロスセル設計

既存事業のグロースに加えて、新規事業の立ち上げを並行して行っていく必要があるためハードですが、ベーシックのPLG事業の将来を見据えた時の、重要な準備段階だと思います。
国内ではまだあまり前例がない、PLGにおけるデータ活用の仕組みづくりや、再現性のある事業成長のためのデータ推進に携われることは、非常にチャレンジングなことだと感じています。

formrunでは「世の中のすべてのフォームをformrunにすること」を本気で目指しています。そしてその実現のために、データ構築推進グループでは事業成長のための仮説検証を高速化・高度化し、意思決定を支えていくことがミッションになります。私たちが行おうとしているのは、PLGにおけるデータ推進という、国内ではまだ体系化されていない領域へのチャレンジなのです。

そんなデータ構築推進グループでは、PLG事業部の目指すもの、そしてPLGにおけるデータ活用のチャレンジに興味を持っていただける方を募集しています。特に以下のような思いを持った方には、自信を持ってフィットする環境だと考えています。

  • 事業会社のデータ担当として、ビジネスドメインを深く理解しデータ案件を推進したい

  • 事業会社だからこその、ビジネス職と掛け合わせながら 〇〇 × データ というキャリアを作っていきたい

  • 既存の整備されたデータ基盤からだけではなく、事業推進のために新たに必要なデータの取得も自ら起案しながら、スピーディーに分析案件を進めていきたい

データ構築推進グループの立ち上げからは長期間が経過しているわけではなく、ベーシック自体がベンチャー企業ということもあり、短期では大規模な企業が行うようなR&Dや最先端の機械学習アルゴリズム開発等の研究テーマに対する取り組みは難しいという点はあります。

一方で、ホリゾンタルなPLG型SaaSの 0→1 フェーズと 1→10 フェーズであるからこそ、複数の事業フェーズに関わりながら再現性の高いスキルを手に入れやすいという魅力があります。

また、市場規模が大きいPLG型のサービスであるため、サービスを利用するユーザーのデータやformrunを使って作られたフォームのデータ、フォームに回答したエンドユーザーのデータなどさまざまな種類のデータが多く蓄積されており、解決できる課題の範囲が広く、非常に取り組み甲斐があります。

もしほんの少しでも興味が湧いた方がいれば、ぜひ一度お話の機会をいただければ幸いです!データ構築推進グループとしてのチャレンジを一緒に進めたいという方からのご応募をお待ちしております。

最後までご覧いただきありがとうございました!

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