新卒採用に苦しんでいたベンチャー企業が、採用手法を1つに絞ったらうまくいった話 〜実践している採用・オンボーディングの型〜
はじめまして、株式会社ベーシックの大谷桃子(@basic__momo)と申します。
私は現在ベーシックにおいて人事広報部に所属し、中途・新卒ともに採用業務全般を務めています。そして新卒領域においては採用責任者として、新卒採用計画から実行までを一貫して行っています。
ベーシックでは、年間の採用計画として、今年は中途採用で40名以上、新卒採用で10名の採用を目標としています。先月11月からはいよいよ24卒の新卒採用活動も始まったので、同時に中途採用の大詰めという中で、大忙しの毎日です。
さて、最近他社の人事の方とお話する機会も多いのですが、ベーシックのように中途採用の比率が高い中で、新卒の採用も同時に行わなければいけない状況において、苦戦されている企業も多いようにお見受けしています。
そして、それに対してベーシックが新卒採用を短期間で終えていることに驚かれることも少なくありません。
そこで今回は、ベーシックがどのようにして新卒採用に取り組んでいるのか、また採用後のオンボーディングも含めて、活動内容をご紹介したいと思います。
以下に当てはまるような、新卒採用に苦労されている方のご参考に少しでもなれば幸いです。
ベーシックの新卒採用の実績
ベーシックは全社で160名ほどの人数規模の会社ですが、事業の急速な拡大に伴い(以下参照)、冒頭で触れましたように、現在の規模に比してかなり大きな数の採用を、中途・新卒双方で行っています。
採用人事としては3名という限られた体制の中、また前述の通り中途入社の比重がかなり大きい中で、それでも優秀な新卒も合わせて採用していくために、新卒採用については、徹底的にフォーカスするポイントを絞った活動を行ってきました。
その結果、前回の2023年新卒については、期間としては5ヶ月で採用目標を達成、内定承諾率は100%という、短期間そして高い効率で採用を行うことができました。
また、ここ数年の間に採用した新卒では、ベーシック史上最速で全社MVPを受賞した方、2年目でマネジャーに昇進した方、20代で部長に昇進した方など、ただ単に採用人数としての目標を達成するだけではなく、中途社員以上に大きな活躍をする新卒入社の社員も多く排出できています。
なぜこのような状態を作ることができているのか、それはとにかく、自分達の「新卒採用の型」をしっかりと押さえておくこと、その上でその型に基づいたゴール・戦略をあらかじめ立てていくことが重要なのではないかと思っています。その点について以下で説明していきます。
ベーシックにおける新卒採用活動のポイント
まず大前提として、私たちのようなリソースが限られた状況における活動のポイントは「いかに捨てることを決められるか」だと考えました。
一般的には、新卒採用の手法としては、ダイレクトスカウト、求人広告、イベント、合同説明会、1dayインターンなど、様々な手法を織り混ぜ、期間としても1年近くかけて活動を行う企業が多いかと思います。
そのような中、ベーシックは上記方針に基づき、一つの手法に絞って活動しています。ベーシックが行っているただ一つの手法、それは「エージェント」です。
実はベーシックにおいても、過去にはそれこそ上記全ての手法で採用活動を行っていた時期がありましたが、人事の人員も限られている中、当然のことながら工数・リソースが取られ、全てに十分には手が回り切らない上に、結果的には中途採用の活動も圧迫してしまっていました。
蓋を開けてみると、結局はほとんど成果が得られなかったチャネルが複数存在しており、費用観点でも決して良い結果であるとは言えない状況でした。
そこで、過去何年にも遡って、まずはチャネル別の成果を定量的に徹底的に振り返りました。加えて、各チャネルから入社したメンバーが、その後いかに活躍しているかという観点も加えて見た結果、ベーシックにおいては、エージェントが最も効果が高かったのです。
ここでお伝えしたいことは、だから皆さんもエージェントを使うことをお勧めしますということでは決してありません。その企業において活躍している人の傾向や、チャネルごとの成果・コスト面を考慮した上で、ただ採用手法を広げるのではなく、思い切って「絞る」ことが重要であるということをお伝えしたいと思っています。
ベーシックにおける新卒採用の型
さてそれでは、「絞る」ということを選択して活動している私たちが、新卒活動において実践している、いくつかの「型」について、具体的にご紹介していきたいと思います。
① 採用チャネルの最適化を定期的に行う
前述の通り、ベーシックでは新卒採用のチャネルをエージェントのみにしています。お付き合いする社数としては、大体毎年4〜5社ほどとなっています。(※こちらは各社の目標の採用人数にもよるので、社数はあくまで参考までにしていただければと思います。)
その上で、これらのエージェントを常に固定にするのではなく、毎年成果を振り返った上で、必要に応じてお付き合いする先を入れ替えることを行っています。その基準としては以下のように考えています。
そして、この基準に基づき採用実績の振り返りを行う上でも、【送客数〜決定までの歩留まり予測】を、最初に出していただき、それに基づき定量的に振り返るようにしています。
最終的に採用ができたか否かの判断は多くの会社でも行っているかと思いますが、採用ファネルにおけるどの点が当初の計画と異なっていたのか、課題があるのかを明確にすることにより、より適切な判断が行えると考えています。
② 現場社員を選考に巻き込む
上記のようにお付き合いするエージェントを決定し、実際にエージェントから学生を送客いただいたら、いよいよ面接のプロセスが始まります。
ベーシックのようなベンチャー企業において、このプロセスで重要なこと、それは会社をよく知ってもらい、魅力を感じてもらうことだと思っています。
知名度のある大企業とは異なり、応募はいくらでも来るという状況では当然ないからこそ、エージェントを通じてベーシックを知っていただいた方を、いかに「アトラクト」できるかを考えるようにしています。
ここで重要となるのは、人事以外の「現場社員」の巻き込みだと考えています。もちろん人事でも全力でアトラクトをするものの、面接および面接外のアトラクト面談や座談会などで現場社員を巻き込んで訴求できるかどうかで、候補者体験は変わってくると考えています。(こちらは他社の採用担当者さんと情報交換する中でも強く実感しています。)
そのために、ベーシックでは「アトラクト面談」を選考フローの途中にあらかじめ設けています。都度状況に応じて設定というやり方ももちろんあるのですが、上記観点から、ことベーシックにおいてはプロセスとして必須であると今は考えています。
面接の中でも当然アトラクトは行っていくものの、実際にベーシックで働き活躍している社員と、面接という形態ではなく、よりカジュアルに話をしてもらうことで、会社に対する理解をより深めてもらったり、意向度が向上するということが行えていると感じています。
メンバーについては、新卒入社1〜4年目で、活躍していたり、訴求力が強い社員を人事の方で複数名リスト化し、候補者の軸や志向に照らし合わせ、その中から面談を組んでいます。
なお、この現場社員を巻き込む上での肝は、「採用こそが今の会社の課題解決に繋がっている」という当事者意識を持ってもらい、自発的に協力してくれる体制づくりができるかだと考えています。
そのためにベーシックでは、現場の部長やマネージャーと人事の間で週次でミーティングを行っています。これを通じて、新卒採用に限らず中途採用も含めて、各現場での課題共有や、採用の状況や組織についての議論を定期的に行い、常日頃からそのような自発的な風土を醸成していくことを心掛けています。
③ 選考の内容を社内で丁寧に共有する
せっかく面接を通じて候補者が話してくれた内容が、次の面接者に正しく伝わらなければ、候補者の体験として損なわれますし、また前述アトラクトの観点からも、こちらから適切なお話ができないと考えています。
当たり前かもしれませんが、そのためベーシックにおいても、次の面接や面談に繋げる際には、その前段の選考の内容をなるべく詳細に社内で共有するようにしています。具体的には、
・候補者の基本情報
・面接で会ったメンバーの評価、所感
・候補者が会社に抱いている懸念事項や不安なポイント
・候補者の他社選考状況
・候補者への訴求ポイント、この面接で実現させてほしいゴール
などを、まずはSlackでまとめて共有しています。その上で、事前に次の面接者とのすり合わせミーティング(ブリーフィング)を行うことも多いです。
④ 適切なコンテンツの事前共有を行う
優秀な候補者が途中で選考を辞退するというのは、採用に携わる方であれば、どうしても避けたいことかと思います。
その極小化のために、ベーシックでは、事前に候補者の志向に応じたコンテンツを共有することにより、候補者の意向度を面接に先立ってできる限り向上させることを心掛けています。
その中でも特に力を入れているコンテンツが「note」であり、社員が自ら書いた記事が、現在150本ほど公開されています。
軸や志向については候補者により様々なので、できる限り記事の幅を広げることで、「自分と同じような思いを抱えて入社した人がいて心強いな」「自分もまさにこのような挑戦がしたかった」などと共感し、意向が高まることに繋がると考えています。
また、面接前はもちろん、面接中に質問をいただいたような場合にも、その場で口頭で回答することに加えて、その後のメールでより詳細がわかるnoteを送付することもあります。
ご参考までに、いくつか例となるようなnoteを記しておきます。
▽就職活動の軸について迷っている場合
▽女性の活躍について知りたい場合
なお、広報が会社を代表してnoteを書いていたり、オウンドメディアを運営していたりする会社自体は多いかと思いますが、ベーシックでは、あくまで社員各自が執筆することにより、思っていることや熱量を、より直越的に読み手に届けることを心掛けています。(このようなコツ自体もnoteで公開していますので、よろしければ合わせてご覧ください。)
⑤ こまめに連絡を行う
新卒採用の場合は、候補者が同時に何十社もの選考を受け、いくつも内定を貰いにいく傾向が、中途採用と比べて相対的に多いことは、採用に関わる皆様であれば実感していることかと思います。
そのため、最初に面接で言っていた軸がしばらく経って変化していたり、自社に対する志望度が時間が経つにつれ変化していくケースが少なくありません。
第一志望と聞いていたのに、知らない間に他社に惹かれ、いつのまにか自社から心が離れていたり、中には急に連絡が途絶えたりというケースも、ご経験をされた方もいるのではないでしょうか。
この状況を極力回避するため、ベーシックにおいては、これまでご説明したようにエージェントというチャネルを中心としながらも、「いかにこまめに連絡を取り、候補者の心境を正確に把握しておくか」という点を心掛けています。
選考途中の段階で候補者と直接連絡をすることは制限されているエージェントも多いため、直接・間接については場合によりますが、少なくとも内定後については、こちらから積極的に連絡を取るようにしています。
メールはもちろん、あくまで候補者としてより都合が良い場合、LINEやFacebookなどの手段を使うこともあります。
私は位置付けとして、「何でも相談できるお姉さん」のような立ち位置を目指しており(笑)、例えばこのような感じで、できるだけ候補者に寄り添い、安心して次の面接に望んでもらえるようにしています。
このようなことを通じて、前段で触れたような候補者の心の変化にも気付くことができるため、追加のアトラクト面談を入れる等、必要なアクションを早期に打てることにも繋がっています。
場合によっては上の例でも記載した通り、第三者視点で他社の良いところやアドバイスもすることにより、最終的に本人にとって納得のいく決断が出来るよう促したりもしています。
⑥ できるだけ直接会う機会を作る
ベーシックはテレワークが比較的働き方の中心となっているのですが、その中においても、選考の後半においてはできるだけ直接会う接点を持つよう心がけています。
過去の実体験としても、完全にオンラインで完結するよりも、例えばオフィス見学を兼ねて社員と生のコミュニケーションをとってもらった方が、お互いの素が見えやすく距離も縮まりやすいため、結果的に候補者としてもいい判断ができると感じています。(もちろん地方にお住まいの候補者もいるので、そこは臨機応変に対応しています。)
その一環として、ベーシックの社内にある「basic Bar」と呼ばれるコミュニケーション活性化を目的としたバーカウンターにて、既存社員と候補者で、よりカジュアルに語らう機会を設けることも時折行っています。(福利厚生の一環で、終業後は無料でストックしているお酒や飲料を飲むことができます。)
オンライン面接が主流となっている中でも、オフラインかつフランクなコミュニケーションを行い、候補者側、採用側、双方の本音をよりぶつけ合うことは、意向度の向上という観点はもちろん、仮にミスマッチがある場合にお互いに気付くこともでき、直前になっての内定承諾辞退や入社後の早期離職などの、残念な結果を双方避けることにも繋がると思っています。
⑦ Welcome Letterを渡す
いざ内定まで至った候補者については、「Welcome Letter」という、歓迎や感謝の意を伝えるお手紙を渡しています。
最後のオファー面談にてオンラインでお見せするのはもちろん、こちらも上述のようにオフラインで会う場合は、厚紙に印刷して実際にお渡しするようにもしています。
メッセージを伝えるのは、面接を行った役員陣、アトラクト面談をした現場社員、人事などになります。配属予定の部署のメンバーから、もしくは全社的にメッセージを募る手法もあるとは思いますが、あくまで実際に面談・面接に関わり、その過程で人柄や思考性を熟知したメンバーからメッセージを送った方が、より深みのあるメッセージを届けられると考え、あえて「選考過程のメンバー」に絞っています。
入社した新入社員からも、入社を決める最後のひと推しになったという声や、入社の記念となったという大変嬉しい声も頂戴しています。
入社後、活躍してもらうためのオンボーディング活動のポイント
以上が、新卒採用活動において、ベーシックが行っている7つの型のお話でした。
さて、新卒採用の成功は、内定を承諾してもらうことではなく、当然のことながら実際に入社いただきその後も活躍してもらうことです。
ベーシックでも、その実現のために、内定承諾をしていただいた候補者に対する「オンボーディング活動」にも同時に力を入れていますので、最後にその内容についてもご紹介できればと思います。大きくは以下の4つです。
内定者インターンの実施
ベーシックでは、入社前の「内定者インターン」を必須にしており、内定承諾後から入社までの期間、実際の仕事を行ってもらっています。
この内定者インターンの目的としては、早期に立ち上がってもらうということはもちろん、正式入社までの約1年間で社員同様の業務を担いながら社員と関係構築を進めてもらい、入社意欲・モチベーションを高くするという意味合いも大きいです。
各内定者には、メインで業務の遂行を支援・指示する上司(現場のマネージャー)と、その補佐をしたり何でも相談できる身近な存在という立ち位置のメンター(入社して1〜3年目の若手社員)をアサインしています。
これは、メンターとなる若手社員にとっても、インターンの教育経験を経て「リーダーとしてやっていけそう」ということを組織に知ってもらう機会にもなります。インターン生にとっても若手社員にとってもメリットになるようなやり方でオンボーディングを工夫しています。
ベーシックでは「期待役割グレード制度」という人事評価制度を運用しているのですが、それに基づき、内定者にも、社員と同じように具体的な期待やミッションをインターン期間中に与えていきます。
そして、上述マネージャーやメンターにさらに人事も加わった形で、毎月それらミッションの遂行具合や、個人の強みや弱みなどの確認を行っています。
直接教育には関わっていない人事もここに加わることで、内定者の最新の状況を随時把握でき、オンボーディング観点で必要なフォローをすることができます。
この「期待役割グレード制度」に基づき、入社歴や年齢に関わらず、大きな期待を早期からかけていくことが成長を促進していくというのが、新卒に限らずベーシックの人事制度としての基本の考えです。
実際にインターン期間を経て大きな成長をした結果、正式入社時にはグレードが飛び級でスタートしたり、入社人からリーダーを任せられるというようなメンバーも毎年多く出ています。
人事1on1の実施
上記の上司とのミッションの進捗確認に加え、内定者のコンディション確認・モチベーション向上のために、人事でも個別に1on1を行っています。頻度としては、基本的に上長は週1以上に対して、人事は月1で実施するようにしています。
インターン中は上司もしくはメンターがメインで見てくれているので基本的に問題はないのですが、とはいえ選考中に寄り添って関わっていた人事だからこそ言えることも時にはあるかと思っています。
ここで例えば「実は今の仕事量がきつく、学校の研究が忙しくなってきたのでパツパツで...」という相談があった場合は、すぐに事業部と連携して仕事量を調節したり、「普段一緒に仕事をするメンバー以外にも、よりいろんな社員と喋ってみたい」という希望があれば、さまざまな部署と交流が持てるようオンラインランチを設定したりもします。
内定者同士の繋がりの強化
上記内定者インターンを始める前に、まずは一度内定者全員で交流する機会を作っています。地方に居住している内定者もこの時は同時にオフィスに来てもらい、皆でピザやお寿司を食べたり、時にはビジネス系のボードゲームをしたりして、親睦を深めてもらうようにしています。
上述のようにインターンを通じて既存社員もフォローしていくものの、早期に組織に馴染んでいく上では、やはり同期という横の繋がりは大切だと考えています。
ここで同期のLINEグループを作ってもらうようなことも含め、同期同士で自発的にやりとりを行うようになるきっかけ作りをしています。
既存社員との事前の交流機会の創出
上記インターン以外にも、極力入社前に既存社員と交流機会を設け、組織に早期に馴染んでもらえることを心掛けています。
例えば、ベーシックでは3ヶ月に1度の頻度で全体会を行っています。これは、全社員が集まり、代表および各機能の管掌役員からの四半期の進捗報告の共有、およびMVP表彰を行う会です。
後半には懇親会も設けているので、会社の全体像や今後目指していく方針を理解してもらうということに加えて、ここで様々な社員と交流してもらったり、内定者同士の仲を深めてもらうことを目的としています。
また、それ以外にもエンジニアのTGIF(※)に招待したりと、内定者の時期から、社内のイベントに事前参加する機会を設けるようにしています。
長くなりましたが、以上が、ベーシックにおける、新卒採用プロセス、またオンボーディングについてのご紹介でした。
私達のように中途と新卒両方を担当していたり、または採用に加えて、オンボーディングや教育を同時に担当していたりと、人事は概して激務の方も多いかと思います。
その中で、私たちの事例や考え方をご参考にしていただき、最短距離で成果を出せる企業が一社でも増えたらとても嬉しいです。
とはいえ私達自身も、24卒の採用活動については現在絶賛実施中なので、引き続きいい出会いが創出できるよう、これからも採用活動を頑張りたいと思います!
もしこのnoteをお読みいただいた皆さんの中で、新卒活動についての他のベストプラクティスがあればぜひ教えてください。色々な方と情報交換・意見交換をさせてもらえると幸いです。
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最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!