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パートナーサクセスで案件紹介を1年で3倍にしたferret Oneの取り組み

こんにちは、株式会社ベーシックの宗形 彩世(@ayayamumu)です。私は現在、オールインワン型BtoBマーケティングツール『ferret One』のパートナーサクセスとして働いており、パートナーサクセス歴としては約1年半が経とうとしております。

今回は、パートナーサクセスのパイオニアの秋國さんからお声がけいただき「パートナーセールスアドベントカレンダー2022」の12月23日分を担当させていただくことになりました。

パートナーセールスアドベントカレンダー2022 12月23日

私は半年程前に、これからSaaS領域でパートナー開拓をされる方に向けた以下のnoteを公開しました。ありがたいことに予想以上の反響をいただき、このnoteをきっかけに、パートナー開拓にお悩みの方々とお話させていただいたり、壁打ちさせていただいたりする機会も一気に増えました。

そのようなことを通じて色々とお話を伺う中で、この分野に関するノウハウが、まだ完全には確立されていないことを改めて痛感しています。

前回のnoteでも一部書いたように、私自身が立ち上げの苦悩を経験してきており、現在でさえも、なおノウハウが不十分の中で色々と施策を進めています。
だからこそ、同じような悩みを持っている方のお役に少しでも立てればと、今回はアドベントカレンダーに参加するという形で、またnoteを執筆することにしました。

前回のnoteでは主に【パートナーの開拓方法】について書きましたが、今回は【案件の創出方法】についてご紹介させていただきます。

前回noteの内容にも少し触れながらお話をしていくため、まだご覧いただいていない方は、ぜひ先にご一読いただけるとより内容が理解いただきやすいかと思います。
商品特性や商材単価の観点から、今回のお話が全員にとっての正解ではないかもしれませんが、ベーシックでの事例が少しでも皆さんの参考になれば嬉しいです。

パートナー社数は増えるものの、なかなか増えない紹介数

読者の皆さんの中には、「パートナーサクセス組織を立ち上げたものの、その後なかなかスケールしない・・・。」とお悩みの方も多いのではないのでしょうか。

私達も例外ではなく、ferret Oneのパートナーサクセスを立ち上げてから1年強が経ち、パートナーの社数自体は順調に積み上がっていったものの、そこからの「紹介数」が安定してきたのは、本当にここ3〜4ヶ月の話となります。

なんとか紹介数を増やすために、前回のnoteでもお話したように、アウトバウンドを実施したりリファラルで案件を紹介してもらったりといったことを繰り返していたのですが、逆に言うと常に何か動かなかれば紹介をもらえないある意味”自転車操業”のような形だったため、それをずっとやり続けることには限界を感じていました。

仮に今後、担当者(私)がいなくなった時のことを考えても、このままではあまりにも属人的過ぎて厳しいという判断になり、「パートナーからの紹介数を増やすためにひたすら動き続ける手法」から「より安定的に紹介をいただける手法」へと方向性をシフトし始めました。

結論を先にお伝えすると、そのようにして“自転車操業からの脱却”を目指した結果、紹介数は1年で3倍以上に伸びました。また、その案件のほとんどが、直販では接触できていなかった企業となりました。

その取り組み内容について、大きく以下の3つに分けてお伝えしてければと思います。

・ターゲットパートナーの再定義
・新定義に基づいたターゲットパートナーの新規開拓
・既存パートナーからの紹介の最大化

ターゲットパートナーの再定義

前回のnoteでもご紹介させていただいたように、パートナー開拓を始める上で、どこのパートナーと相性が良いのかがはじめは分からなかったため、ferret Oneの立ち位置と補完関係となる可能性が高い業種を見つけるために、まずはマーケティングにおけるバリューチェーンを把握し、自社のその中におけるポジショニングを明確にした上で、攻めるべき業種を見つけていくということを元々行っていました。

バリューチェーンの図

このバリューチェーンに基づき、補完関係となる企業を具体的にピックアップし、開拓を実施していくことで、社数自体は一定順調に積み上がりました。

しかし、そこから実際に紹介が生まれているか、という観点ではその成果はバラバラであり、中には契約だけしている状態という企業も多く、ferret Oneにおける理想的なパートナー像がある意味分からなくなってしまっていました。

そこで、立ち上げから約1年たった頃に、改めてターゲットとするパートナーの定義から、以下の手順で見直すことにしました。

仮説を立てスコアリングする

まずは「安定的にferret Oneをご紹介いただけそうな企業とはどんな企業なのか?」の仮説を改めて立てることにしました。

それにあたり、以下のような軸を用意し、それまでに商談した企業のスコアリングをそれぞれ行い、比較しました。
これは、結局のところ「自社サービスを紹介する機会が多いパートナー」を見つけることが肝だと考えていたためであり、下記の項目のスコアが高ければ高い程、紹介が発生しやすいと考えたからです。

・商材の提案タイミングがあるか
・既存顧客が500名以上いるか
・新規顧客を積極的に取っているか
・営業人数が一定いるか
・SaaSツールの取り扱いがあるか(=紹介の経験があるか)

これらの軸に基づきスコアリングした結果、ほぼ想定通り、これらのスコアが高い企業からの紹介数が実際に多いという結果が出ました。

スコアリング図

既に契約済みのターゲットパートナーと仮説を検証する

次に、一定の相関関係は上記のスコアリングで見えたものの、本当にそうなのかを検証するため、この定義に当てはまる企業について、特にスコアが高い企業を中心に、どんどんコミュニケーションを取って関係構築を進めていきました。

そうして検証を進めていった結果、接触した大半の企業の紹介数がそれまでよりも増加する状態となり、立てた仮説が正しかったことを検証できました。

これだけ見ると、「結局、量をこなすというところから脱却できていないのでは?」と感じる方もいるかもしれませんが、検証してみないと机上の空論になってしまい、気づいたら結局相性の悪いパートナーばかり開拓していたということにもなりかねません。
データで仮説を立てることはもちろん、実際に接触してみて確かめることは、ターゲット定義の段階ではやはり重要だと思っています。

新定義に基づいたターゲットパートナーの新規開拓

定義の見直しを行ったので、それに基づき、ターゲットパートナーの開拓も改めて行い直しました。それまでの経験も踏まえて、より効率良く開拓をするために、具体的な新規開拓方法として以下のことを行いました。

ー ABM
新しい定義に基づき、ある程度ターゲットとなるパートナー企業の目星が付けられたため、ABM(Account Based Marketing)方式で新規の注力パートナーを開拓しました。

具体的には、パートナーになりうる企業のリスト制作、スコアリング(営業人数や新規売上の規模など)をつけ、アタックする優先順位の確認や、洗い出した企業と繋がりがないかを社内や知り合いを通じて確認し、あれば繋いでもらう・なければアウトバンドを実施する、などです。

ー 展示会への出展・挨拶まわり
加えて、自社の直販部隊が展示会に出展した際に、私もパートナー担当として参加しました。
これは、展示会には情報収集を行う代理店企業も多く参加されているためであり、そのような方がブースに立ち寄った際には、私に繋いでもらいました。

また、展示会にはパートナーになりうる企業自体も多く出展しているため、名刺交換のためのブース周りも積極的に行いました。
他社視察のため、責任者クラスの方たちがブースにいる確率も高いことから、通常の開拓方法よりも効率よく、こちらもオススメです。

ー過去アプローチした企業への再アタック
一度お打ち合わせをして繋がらなかったパートナーでも、ナーチャリングや再アタックすることは重要だと考えています。
例えば、現在注力パートナーとなっており、紹介数が最も安定しているパートナーの1つとなっているとある企業があるのですが、元々は、そのパートナーとは一度お話ししたものの、色々な理由でタイミングが悪く、最初は話が進みませんでした。

しかし、その企業は、新たなターゲットパートナーの定義に合致していることと、先方の抱える顧客の規模感や課題感がferret Oneで解決できることと合致していたため、諦めずに再アタックを行いました。
そうしたところ、先方が改めて新しい連携先を探しているタイミングだったため、晴れて連携がスタートしました。
パートナーターゲットを定めた上で、そこに合致する企業については、過去にダメだったとしても諦めずに再度コミュニケーションを取っていくことの大事さを実感しました。

既存パートナーからの紹介の最大化

こちらも前回のnoteでもお伝えした通り、ferret Oneでは、ターゲットパートナーを、さらに下記のように分類しています。
新規を継続的に増やしつつ、まずは実際に紹介を生み出し、そこからできるだけ多くの企業に“注力パートナー”に転換していってもらえるよう、日々フォローしているという形です。

ちなみに、ferret Oneにおいて、パートナーサクセスの現場担当者は私一人だけのため、基本的にはリソースが非常に限られています。
そのため、おおよそ「6(既存からの発掘):4(新規開拓)」のリソース配分で活動しています。

パートナー分類

全体の紹介数を増やすためには、上記の“注力パートナー”をいかに増やしていくかが当然重要となります。
何社かはこれまでの取り組みでも生み出せていたものの、ここをさらに増やしていくために、以下のことに取り組みました。

ーパートナーの負担を軽減し、紹介に注力してもらう
上記のように【紹介・取次・販売】と3つのパートナーのパターンがあるものの、ferret Oneの様なマーケティングツールは説明コストが掛かりがちなので、いきなり”販売パートナー”となっていただく座組には実際には少々ハードルがあることが見えてきました。

元々はある意味全方位でパートナーを探していたのですが、途中から、課題を持つエンドクライアントをとにかく「トスアップ」してもらう”紹介パートナー”メインで取り組むようにしました。
紹介いただいた後の商談はferret One側で行うことで、パートナー側の心理的負担と業務的負担を減らすことにより、紹介という観点では以前よりも遥かに起こりやすくなりました。

もちろん理想としては、より広範囲に役務を担える販売パートナーが多いにこしたことはありませんので、以下でご説明するような取り組みを通じて、ferret Oneの紹介にもどんどんと慣れていってもらい、販売パートナーへとなるため、担える範囲を広げていってもらう活動も続けています。

ferret Oneパートナープログラム

ー トスアップ頂いた案件のフィードバック
前述の通り、ferret Oneでは、案件を紹介(トスアップ)いただき、その案件に対してのサービス紹介は我々が行うという連携を現在は多くしています。
一方で、立ち上げ当初はこのトスアップに対する商談のフィードバックがきちんと出来ていなかったために、紹介パートナーも、どんな企業との相性が良いのかが分からず、何件トスアップいただいても前に進まないというようなケースが多発していました。

そこで現在は、商談した案件がどうだったのか、どんなポイントが良くどんなポイントが悪かったのかを、案件毎にきちんとパートナーにフィードバックし、トスアップの質を双方で確認することにより、トスアップ基準のチューニングを行っています。これにより案件化する率がぐっと上がりました。

パートナー側も相性の良い企業の傾向が把握でき、トスアップした成果も目に見えるため、よくあるパートナーのモチベーションの低下を防ぐことにも繋がります。

ー 商談動画・音声の共有
トスアップした案件が、その後どんな状況でクロージングされているのか分からないというパートナーは往々にしていらっしゃいます。
ferret Oneでは、トスアップしてもらった案件はすべて私が一次対応しているため、その時の商談動画や音声などを共有し、ferret Oneを訴求する上でのイメージを持ってもらっています。これは、一次対応に限らず、その後クロージングするまでの各種商談も含まれます。

商談の流れを実際にみてもらうことにより、ファーストコンタクトの際のヒアリングやアプローチなどが変わっていきますので、こちらを行うのは特にオススメです。

ー 定例ミーティングの改善
以前より定例自体は実施していたのですが、現在はただやみくもに行うのではなく、日々の案件のフィードバックはもちろん、双方のトピックスを共有しあうことで、よい良質なアポイントをトスアップいただけるような取り組みを行っています。

例えば、パートナーは日々の業務で忙しいため、最近のアップデートや他社の事例などを、メルマガなどで送っても全て把握してもらえるものではありません。
そのため、定例を通じて直接事例などを紹介することにより、より状況を知っていただく時間を作ることが必要だと思っています。
それに加えて、ただ紹介を待っているだけのスタンスではなく、パートナーの資産も活かしながらサポートしていくことも必要だと考えています。例えば、パートナー側で保有しているハウスリストに対して

・自社製品のPRメルマガを送付する
・ノウハウのセミナーや勉強会を開催する 

などを行うことで、実際に提案の幅を広げることができました。
ただ結果だけを共有するような場から、より戦略的な取り組みの議論が行える場になるよう工夫するようにしています。

KPIについて

ここまでが、紹介数の増加のために行った取り組みでした。
さて、他社の方とお話する際によく聞かれるものの1つに「KPIの設定」があります。せっかくですので、そちらについても今回ご紹介できればと思います。
ferret Oneの場合、立ち上げ当初から現在に至るまでの間で、追いかけるKPIは下記のように変わっていきました。

KPIの変遷

図にあるように、立ち上げ当初は“契約数”に重点を置いており、実際に10ヶ月で100社以上との契約を獲得することができました。

しかし、そこから紹介が比例的に増えなければあまり意味はなく、ただ自転車操業のように動き続けるのは無理があるため、今回ご紹介してきた通り、立ち上げから1年経った頃に、開拓ターゲットの方向性を決め、安定的な“紹介数”を貰えるようにとシフトしていきました。

そして紹介数も安定的に増えてきたので、現在は、その紹介からferret Oneの受注に実際に繋がる案件を創出することを目指しています。
その実現のために、現在では、トスアップしてもらった案件に対する“同席数”や、商談を自ら行うことも含めてどれだけ“SQL(Sales Qualified Lead)”化できるかをKPIとして追いかけています。

これからの挑戦

前回のnoteでもお伝えさせていただきましたが、パートナーサクセスの仕事は究極、“人との繋がり”だと思っています。少し余談になるかもしれませんが、パートナーサクセスに関わる人は皆、口を揃えて言っています。「パートナーサクセスは泥臭い営業だよ」と。

「泥臭い営業」なんてことをいうと、今の時代に逆行しているように思われるかもしれませんが、その泥臭さが人間らしさをより際立たせ、かえってより良いものになると私も思っています。
だからこそ、私の周りのパートナーサクセスの責任者の方々も、いかにそういった繋がりを構築し、その中から推進力のある人を見つけ、さらには会社や部のKPIに入れてもらえるかということまでも行いながら、さまざまな取り組みを行っているのだと思っています。

私自身、今回は案件数を増加させるお話をさせていただきましたが、皆様も感じていらっしゃるかもしれませんが、決して飛び道具的なものはなく、どちらかというとどれも地道な取り組みだったかと思っています。
まだまだ確固たるノウハウが存在せず手探り状態であり、地道なことも非常に多い仕事ではありますが、それでもこのパートナーサクセスという仕事が私は楽しいです!

この半年間はとにかく“自転車操業からの脱却”を目指して試行錯誤を繰り返しましたが、その結果、与えられたKPIを達成することができ、2022年3Qには、なんと全社の準MVPを獲得することもできました。
勝手ながら、この受賞が、スポットライトが中々当たらないパートナーサクセス業界の方へ希望が与えられるきっかけになれればとも思っています!

私と上司の林

これからも、自社のプロダクトやソリューションでは解決が難しい領域を、 ferret Oneと取り組んでいただくことで、パートナーがクライアントの課題解決ができるようになることを目指しています。

そんな中でも、今年の活動としてまだまだ足りないと感じたことは、「地方開拓」および「パートナーへのフィー以外の還元」です。
来年からはそれぞれに対して、下記のことにも挑戦していきたいと思っています。

地方開拓

・銀行・地銀の開拓
・商工会への参加
・地場に根付いた企業の開拓

ferret One自体はWeb集客を得意としていますが、上記で挙げたような企業は、Webマーケティングに関する課題が出てきた時に、Web検索を通じて情報収集をするのではなく、身近な方(お付き合いのある広告代理店や顧問・銀行などの接点の多い方々)へご相談するケースが多く、そのため現状はferret Oneとの接点は発生しづらい状況です。

我々の通常のマーケティング活動の範囲では出会えない企業との接点を強化するためにも、今後は地方に拠点を持つパートナー企業と連携することで、より全国の案件をキャッチできる取り組みを進めていきたいと思っています。

パートナーへの手数料(フィー)以外の還元

パートナー締結をした後に、紹介や成約に至ったら手数料(フィー)をお支払いしているのですが、ただそれだけでは、パートナー側のモチベーション向上や、関係構築をする上では足りないと感じています。

今後はそれに加えて、「コミュニティー作り」や「オフラインイベント」を実施し、パートナー同士の情報連携(ferret Oneの売り方・手法など)の場を設けたり、「表彰制度」でモチベーションを高めるなど、パートナーとの関係作りを強化できる、新たな場作りも行っていきたいと思っています。
個別にそれぞれのパートナーとお話することはもちろん、パートナー同士での接点を作ることで、ferret Oneに対する想いや共感を、より醸成することができないかと考えています。

ここまでご覧いただきありがとうございました。
パートナーサクセスの取り組み、またferret One自体にご興味あるという方がいらっしゃいましたら、お気軽にDMいただければと思います。
https://twitter.com/ayayamumu

改めまして2022年もありがとうございました。本当に沢山の方に支えられた1年だったなと噛み締めております。
来年はそんな方たちに恩返しできるように努めたいと思いますので、どうぞ引き続きよろしくお願いいたします!

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